ポールポラックのブログの中で、
「マイクロクレジットに関する5つの幻想」と題された記事があったので簡単に紹介です。マイクロクレジットというイノベーションが生まれてからすでに30年以上が経っていますが、その成功を賞賛するだけでない、建設的な議論がまとめられていると思います。ブログの記事をベースに、ところどころ補足などを加えているので、ポールポラックの書いた記事の原文を読みたい方はこちらを参照してください。
幻想① マイクロクレジットが貧困から抜け出すための方法であると科学的に証明されているということ
マイクロクレジットは国際開発の分野で広く注目を集めているにも関わらず、その正当性が完全に証明されているものではない。例えば、無作為コントロール試験(RCTs)を用いてマイクロクレジットのインパクトを評価したイェール大学のDean Karlanによれば、マイクロクレジットのベネフィットは、それが貧困の解決という望まれるベネフィットの生み出すための決定的な要因であるということではなく、マイクロクレジットを通じていくつかのベネフィットが観察される、という程度に留まっていると言える。
幻想② マイクロクレジットがなければ、貧困者は融資へのアクセスがない
インドで一緒に研究をしたAishwarya Ratanによれば、マイクロクレジットの代替としての役割を果たすものはたくさんあるという。彼によれば、金貸し、フォーマルな農業ローン、
チットファンド(相互扶助金融組織)、
Rotating Saving Credit Association (RSCAs:適切な和約が見つかりませんでした)、質屋、協同組合、地主、友達、家族、などがマイクロクレジットの小額融資の機能を代替することができる。そして、これらの代替物に比べて、マイクロファイナンスへのアクセスは敷居や高いことにも注目しなくてはならない。
幻想③ マイクロクレジットの借り手は、ビジネスのためだけにそのお金を使う
この幻想はマイクロクレジットの支持者によって主張されるものだが、部分的にしか正しくない。借り手はローンを返すために、別のローンをすること(後述する多重債務の問題)、結婚式や葬式に使われる費用(特に葬式費用がバカにならないくらい高い国もあります。
詳しくはこちらがお勧めです)、教育費、製品サービスの購入など。ビジネスへの投資に使われ、借り手の所得向上につながることはありますが、それだけが用途とはなっていない。もちろん、これらのビジネス以外の用途が意味のないものと言うことではない。突然の出費、収入が手に入る前の一時的な出費等に対して弱い貧困者にとって、こうしたマイクロクレジットの用途は重要であるといえる。
幻想④ 貧困者が貧困から抜け出す為に必要なのは、信用取引へのアクセスだけである
一度、マイクロクレジットの生みの親であるムハマドユヌスにあったのだが、彼は話の中で、慈愛に満ちた言い方でこう主張していた。金融資産があれば、貧困者は自分達の生活を充分に改善することができる。しかし、プライベートで話したときには熱心に、グラミン銀行が貧困と闘うために立とってきた山の数々を話してくれた。例えば、グラミン銀行は、複雑な手順を設けて、借り手に対してグラミン銀行の倫理に基づく誓約とレクチャーを行っている。融資はグループに対して行われるため、新しいグループの全てメンバーは資格を得るために、マイクロクレジットに関する試験を通過しなくてはならない。グループは返済に関する義務を共有することで、各々の借り手が相互圧力を受けることになる。また、ミーティングではグラミンの定める16条を借り手と共有するプロセスを重んじている。多くの村では、グラミン銀行は姉妹組織と連携して、住宅、ヘルスケアなどのサービスを提供している。このように、代表的なユヌスのマイクロクレジットブランドであっても、マイクロクレジット以上のことをたくさん行っているのである。
幻想⑤ マイクロ起業家が経済成長の唯一の担い手であること
マイクロクレジットの貸し手はよく、途上国において多くの労働者が自営業の形態を取っていることを取り上げる。幻想③で取り上げた内容ともつながり、マクロ起業家を支援することで全体の経済も成長していくという主張につながるのだ。しかし、科学的調査は絶えず、本当に少数のマイクロ起業家しかSMEsサイズのビジネスへと躍進することができていないということを主張している。多くのマイクロ起業家にとって、インフォーマル経済で自営業を行うことは、選択ではなく、生きていくための必然性から生じているものだ。限られた教育と起業家としての能力が、フォーマルな機関やフォーマルなビジネスに携わっていくための大きな障壁となっているのである。もし、マイクロ起業家がその国の経済成長の根幹を担っていると言うのであれば、そのメカニズムはまだはっきりしていない。
以上が5つの幻想です。もちろんこうした批判はすでに多く語られており、これを建設的な批判として受け止めてマイクロクレジットも日々変化しているのなかと思います。
いくつか補足ですが、自殺問題やマイクロクレジットの多重債務問題は、最近のトレンドでもよく見かけます。例えば、自殺問題を発端にした昨年末のマイクロファイナンス危機ですが、グループでの返済責任に伴う個人への過剰な圧力とそれによる自殺問題は以前からあった話のように思います。また、多重債務問題について最近面白い試みだなと思ったのは、
インドでの「ユニバーサル識別番号」です。インドの12億人の人口全てに社会保障番号のような認識番号をつけていくというものです。これが完全に普及すれば、個人の債務状況をマイクロクレジット機関が共有して、多重債務を避けることができるようになることも期待されているようです。
また、幻想⑤で取り上げられていることは、前回のブログ記事でも紹介した、マイクロファイナンスを超えたメソファインナンスへの注目の高まりとも関係してくると思います。マイクロ起業家だけでなく、途上国のSMEsが成長することで雇用を創出して経済成長を促していくこと。
今回はポールポラックのブログ記事から、マイクロクレジットの課題を取り上げました。僕自身はマイクロクレジット、マイクロファイナスの専門家ではないので、これをたたき台に、コメントなどを頂けたらと思います。
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